前立腺肥大症の治療薬はなぜ育毛に効く?AGA治療薬の違いまで徹底紹介!
「なぜ前立腺肥大症の治療薬が育毛に効くの?」
「AGA治療薬のフィナステリドやデュタステリドはどこが違う?」
AGA(男性型脱毛症)は、男性の脱毛症で最も代表的な疾患であり、日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約 30%です。
年齢が上がるにつれ発症頻度もあがり、50歳以上の発症頻度は40%にもなります。
AGA治療薬はフィナステリド(プロペシア)をはじめ、主に3種類販売されていますが、これらの薬は前立腺肥大症にも効果があると言われているのです。
この記事ではAGA治療薬が前立腺肥大症に効く理由や、AGA治療薬の種類や違いについてご紹介します。
AGA治療薬はもともと前立腺肥大症の薬だった
AGA治療薬の歴史
AGA治療薬の歴史からご紹介します。
AGA治療薬として代表的なフィナステリド(プロペシア)はもともと前立腺肥大症の治療薬として、「プロスカー」という名前で1992年から米国で販売されています。
現在もプロスカーは販売されていますが、日本では未認可であり販売されていません。
「プロスカー」の研究が進むにつれ、前立腺肥大だけでなく、AGA(男性型脱毛症)にも効果があることが分かり1995年にAGA治療薬として認可されました。
その後日本では2005年に厚生労働省の承認がおり、プロペシアの薬名で万有製薬から販売され、現在ではオルガノン株式会社が販売しています。
プロスカーとプロペシアの違い
プロスカーとプロペシアの違いは以下の通りです。
プロスカー | プロペシア | |
成分 | フィナステリド5㎎ | フィナステリド0.2㎎または1㎎ |
効果 | 前立腺肥大症 | AGA |
発売 | 1992年 | 1995年(日本は2005年) |
日本での認可 | 未認可 | 認可 |
プロスカーとプロペシアの1番の違いは、薬に含有されるフィナステリドの量です。
プロペシアは1錠あたりフィナステリドが0.2㎎または1㎎含まれているのに対し、プロスカーは1錠あたりフィナステリドが5㎎含まれています。
プロペシアには0.2㎎錠と1㎎錠の2規格が販売されていますが、1㎎錠が主流です。
プロスカーはプロペシアに比べて用量が多いので、「よく効くのでは・・・?」と思う人もいるかもしれません。
しかしプロスカーは前立腺肥大症の治療薬として認可されているため、AGAの治療目的には処方されることはありません。
その理由としてプロスカーはフィナステリドの用量が多い分、リスクを伴うからです。
プロスカー5mgはそもそも日本では未認可のため使用が認められておらず、服用することにより精子に影響を及ぼす恐れがあるという発表もあるのです。
そのため、プロスカーをプロペシアの代わりに使うことはできません。
前立腺肥大症とAGAのメカニズム
なぜ前立腺肥大症の治療薬がAGAに効くのでしょうか。
ここでは前立腺肥大症とAGAのメカニズムをご紹介します。
前立腺とフィナステリドのメカニズム
前立腺肥大症の治療薬には以下の5つがあり、プロスカーやプロペシアにあたるフィナステリドは5α還元酵素害薬です。
- α1受容体遮断薬
- 5α還元酵素害薬
- PDE5阻害薬
- 生薬・漢方薬
フィナステリドは5α還元酵素(5aリダクターゼ)と呼ばれる酵素を選択的に阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロンへ変換するのを阻害し、ジヒドロテストステロンの合成を抑えます。
その結果フィナステリドは前立腺細胞の増殖を抑え、肥大した前立腺を縮小させます。
AGAとフィナステリドのメカニズム
AGAでもフィナステリドは、同様に5α還元酵素と呼ばれる酵素を選択的に阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロンへ変換するのを阻害します。
ジヒドロテストステロンは男性型脱毛症の原因物質であり、ジヒドロステストステロンが受容体に結合すると、毛母細胞の増殖が抑制され、ヘアサイクルの成長期を短縮してしまいます。
通常、男性では3~5年かけて髪の毛が成長しますが、ヘアサイクルが乱れて成長期が短くなると、ハリやコシのある髪の毛に成長する前に退行期を迎えるため、細い抜け毛が増えて薄毛に繋がるのです。
AGA治療薬の違いを比較!
現在日本で販売されているAGA治療薬は、主に3つです。
- フィナステリド(プロペシア)
- ミノキシジル(リアップ) ※ミノキシジルのみ外用剤
- デュタステリド(ザガーロ)
これらはすべて特許が切れているため、同じ有効成分を使った後発医薬品(ジェネリック医薬品)も販売されています。
ここでは以下の2点をご紹介します。
- プロペシアとフィナステリド(後発医薬品)との違い
- フィナステリドとデュタステリドの違い
プロペシアとフィナステリド(後発医薬品)との違い
プロペシアとフィナステリドの違いは、先発医薬品か後発医薬品かの違いです。
プロペシア (先発品) |
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フィナステリド (後発品) |
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後発医薬品とは、先発医薬品の特許期間が切れると、他の会社が同じ成分を使って製造した医薬品であり、値段が安いことが特徴です。(※先発医薬品と同じ会社が後発医薬品を作る場合もあります。)
AGA治療薬は、自費診療になるため医療機関によって値段が異なります。
ここではフィナステリドを例に値段の差をご紹介します。
- プロペシア 8,000円~10,000円(税込)/28錠
- フィナステリド(プロペシアのジェネリック) 3,800円~5,000円(税込)/28錠
このように先発医薬品と後発医薬品では、値段が半額程に異なります。
そのため治療薬の値段が気になる人は、後発医薬品がおすすめです。
ただし後発医薬品の場合、添加物などが先発医薬品と全く同じでない場合があるので注意しましょう。
フィナステリドとデュタステリドの違い
フィナステリドとデュタステリドの最も大きな違いは、作用機序です。
前項の【前立腺肥大症とAGAのメカニズム】でご紹介したように、どちらも5α還元酵素害薬に分類されまずが、これらは成分が異なるため一緒ではありません。
フィナステリドとデュタステリドの違いは、以下のようにどの5α還元酵素に作用するかで作用機序が異なります。
フィナステリド | 2型の5α還元酵素の働きを阻害 |
デュタステリド | 2型/1型の5α還元酵素の働きを阻害 |
フィナステリドは2型の5α還元酵素のみに作用して阻害するのに対して、デュタステリドでは2型だけでなく1型の5α還元酵素にも作用します。
2型の5α還元酵素は主に前頭部と頭頂部に作用し、1型の5α還元酵素は側頭部と後頭部に作用します。
そのためデュタステリドの方が、前頭部と頭頂部以外に、側頭部も後頭部もすべてカバーできるのです。
またデュタステリドはフィナステリドに比べ半減期が長いため、薬が作用している時間が長くなります。
このことからデュタステリドの方がフィナステリドより効果が良いとの意見もあるので、気になる方は医療機関へ相談してみましょう。
まとめ
この記事では、フィナステリドやデュタステリドをはじめとするAGA治療薬が前立腺肥大症に効く理由や、AGA治療薬の種類や違いについてご紹介しました。
前立腺肥大に効く理由は、もともとフィナステリドには前立腺肥大症の治療薬として開発された経緯があったためです。
前立腺肥大症の治療薬として売り出され、後からAGAにも効果があることが研究によって分かりました。
AGA治療薬は特許が切れ、すべての成分に後発医薬品が発売されているため、患者さんのニーズに合わせて治療の選択肢が数多くあります。
AGA治療薬が気になる方は、医療機関へぜひご相談ください。