喘息薬に育毛効果があった?ミノキシジルで喘息が悪化する可能性も紹介
「AGAの新薬に喘息薬が関係する?」
「喘息持ちの方が注意すべき育毛剤とは?」
この記事では喘息持ちの方が必見の「喘息と育毛の関係性」についてご紹介します。
薬の開発では臨床試験など研究を重ねるうちに、別の効果を持つことが後でわかる場合が多々あります。
この記事でご紹介する新薬もそのうちのひとつです。
もとは喘息の薬として開発されましたが、後にAGAに効果があることがわかり、現在も研究がすすめられています。
喘息薬として開発されたAGA治療薬とはどのような薬なのか、喘息と薬の関係性について解説します。
喘息薬とした開発されたAGA治療薬とは?
喘息薬として開発されたAGA治療薬は「Setipiprant(セチピプラント)」です。
ここではSetipiprantについて以下の内容でご紹介します。
- Setipiprantとはどんな薬?
- Setipiprantの最近の話題
- 現在治療できるAGA治療薬
Setipiprantとはどんな薬?
Setipiprantとはスイスの製薬企業アラガン社が開発中のAGA治療薬です。
アラガン社とは日本にもアラガン・ジャパンとして法人があり、美容医療で使用するボツリヌス治療やヒアルロン酸注入治療、部分痩せ治療、乳房再建関連製品等を中心に展開しています。
Setipiprantはもともと、アラガンとは別の製薬会社アクテリオンが喘息の治療薬として開発していましたが、有効性は確認されたものの、既存の薬と比べて優れた差がなかったことから開発が中止されました。
ただし2012年、ペンシルバニア大学のGeorge Cotsarelis博士がSetipiprantがAGAの効果を持つことを明らかにしたのです。
Setipiprantの作用機序は、プロスタグランジンD2(PGD2)とよばれるたんぱく質の受容体を阻害することで喘息を治療します。
プロスタグランジンとは第三のホルモンと呼ばれ、わたしたちの身体の生体反応に重要な役割を持ち、以下のように呼吸や免疫など身体の様々な部位に関わります。
プロスタグランジンの作用
- 炎症
- 病気の治癒
- 傷の治り
- 免疫機能
- 心臓系の機能(コレステロールのレベル、血液の流れなど)
- 消化
- 生殖
- 体温調節
そのためプロスタグランジンにもD1やD2、D3など種類があり、Setipiprantに関与するのはアレルギーや炎症に関わるプロスタグランジンD2です。
プロスタグランジンD2はアレルギーを促進する働きを持ち、アレルギーが起こった際、体内にプロスタグランジンD2が大量に放出され、血管拡張や潮紅、低血圧などの症状を引き起こします。
SetipiprantはプロスタグランジンD2が結合する受容体を阻害することで、プロスタグランジンD2の働きを抑え、アレルギー症状を抑制することが可能です。
そのような作用をもつSetipiprantに対し、ペンシルバニア大学のGeorge Cotsarelis博士はAGAに効果があることを突き止め、Setipiprantが再び脚光を浴びました。
ペンシルバニア大学のGeorge Cotsarelis博士の研究結果では、AGA患者の毛包にプロスタグランジンD2が通常よりも高いレベルで存在することがわかりました。
そのためプロスタグランジンD2受容体を阻害する働きを持つSetipiprantがAGAに効果があることがわかりました。
現在Setipiprantの研究はアクテリオンから美容医療を中心に展開するアラガン社に変わり、SetipiprantのAGAに対する効果に関し、アラガン社による研究が続けられています。
Setipiprantの最近の話題
2021年に公開された文献では、プラセボを対象とし、SetipiprantのAGAに対する効果を検証した臨床試験が報告されています。
この臨床試験の内容は以下のとおりです。
試験の目的 | AGAに対するSetipiprantの効果をプラセボとの比較で検証 |
対象患者 | 18歳から49歳のAGA患者 |
試験期間 | 4、8、16、24週の効果を評価し、32週目にフォローアップ |
試験結果 | Setipiprantの安全性は良好だったが、効果の面でプラセボに対する有用性が示せなかった |
この試験ではSetipiprantのAGAに対する効果を検証するために、薬効を持たないプラセボを対象に無作為化二重盲検比較試験で行われました。
プラセボを対象とした無作為化二重盲検比較試験とは、服用する患者さんにSetipiprantかプラセボかどちらを飲んでいるか伏せたうえで治療を行う試験です。
そのため本来プラセボには薬効はありませんが、患者さんは自分がプラセボを飲んでいるかわからないため、プラセボでも効果が出る場合があります。
このSetipiprantの臨床試験ではプラセボに比べて優位な差がでず、有用性が示せない結果となりました。
今後どうなるのかまだ不明ですが、Setipiprantは現在あるAGA治療薬とは作用機序の異なる薬剤のため、新たな選択肢として研究が進むことを待つばかりです。
現在治療できるAGA治療薬
現在治療できるAGA治療薬は主に3つあります。
フィナステリドとデュタステリドはともに5α還元酵素阻害剤です。
テストステロンからDHT(ジヒドロテストステロン)に変換する5α還元酵素を阻害することで、AGAの原因となる男性ホルモンジヒドロテストステロンの生成を抑制する作用を持ちます。
ミノキシジルは毛母細胞を刺激し、細胞分裂を活発にすることで日本で唯一発毛効果が認められています。
これらの薬剤はAGA専門クリニックでも処方されており、フィナステリドまたはデュタステリドとミノキシジルを併用すれば作用機序が異なるため、相乗効果を期待できるでしょう。
ちなみにSetipiprantはもともと喘息薬として開発されましたが、フィナステリド・デュタステリドは前立腺肥大症、ミノキシジルは高血圧の治療薬として開発されており、どちらも後にAGAに効果があることがわかりました。
喘息持ちの人は要注意!AGA治療薬が喘息を悪化する可能性も
喘息の持病があると、薬の飲み合わせにも注意しなければいけません。
前項でご紹介したミノキシジルを服用する際、喘息持ちの人は注意が必要です。
その理由は、ミノキシジルに発疹やかゆみなどのアレルギーを伴う副作用が報告されているからです。
ミノキシジルの副作用
- 皮膚:頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感など
- 精神神経系:頭痛、気が遠くなる、めまい
- 循環器:胸の痛み、心拍が速くなる
- 代謝系:原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ
ミノキシジルにアレルギーが関与する理由は、ミノキシジルが持つ血管拡張作用やミノキシジルに含まれる溶剤が原因と考えられます。
ミノキシジルの外用薬には、直接塗布した箇所の血管を拡張する作用があり、血管が拡張するとリンパ球、好酸球などの炎症細胞からサイトカインが産生されるため炎症反応が増幅します。
さらにミノキシジルは用量を増やせば作用が強く働くため注意が必要です。
喘息を持つ方がミノキシジルを使えないわけではありませんが、注意しなければいけないことを覚えておきましょう。
まとめ
この記事では喘息持ちの方が必見の「喘息と育毛の関係性」についてご紹介しました。
アラガン社によって研究がすすめられているSetipiprantは、新薬として承認されれば現在のAGA治療薬とは作用機序が異なるため、新しい治療の選択肢となりえるでしょう。
2021年、Setipiprantの臨床試験として、プラセボとの無作為化二重盲検比較試験が報告されましたが、Setipiprantのこれからの研究にまだまだ目が離せません。