ストレスと発毛の関係がGAS6で明らかに!ストレスで禿げる仕組みを解明
ストレスがたまると白髪や抜け毛の原因になると言われてきました。
その理由は活性酸素の蓄積による色素細胞(メラノサイト)の機能低下や頭皮の血行不良などです。
2021年4月1日に発刊されたNatureに理化学研究所(理研)の研究チームがストレスが発毛に影響を及ぼす仕組みを分子レベルで解明したことが公表しました。
この記事ではNatureで公表された論文を中心に、ストレスで禿げる仕組みを徹底解明します。
ストレスと発毛の関係性
冒頭でも述べたように、ストレスは白髪や抜け毛など様々な毛髪トラブルを引き起こします。
ここではストレスと発毛の関係性について以下の内容でご紹介します。
ストレスが引き起こす毛髪トラブルとは?
ストレスが原因で引き起こされる毛髪トラブルは以下のとおりです。
- 白髪
- 抜け毛・薄毛
- 髪のパサつき・枝毛
- 頭皮環境の悪化(乾燥によるかゆみや湿疹)
- 頭皮の臭い
- 脂漏性皮膚炎
ストレスが溜まると心だけでなく体にも影響が出ます。
ストレスによって引き起こされる毛髪トラブルは髪の毛と頭皮に分かれます。
髪の毛への影響 | 白髪 |
---|---|
抜け毛・薄毛 | |
髪のパサつき・枝毛 | |
頭皮への影響 | 頭皮環境の悪化(乾燥によるかゆみや湿疹) |
頭皮の臭い | |
脂漏性皮膚炎 |
血行不良や毛穴へのダメージなど頭皮環境が悪化することで、髪の毛への影響にも繋がるのです。
頭皮・髪の毛両方のケアが大切です。
ストレスが発毛に関係するメカニズム
ここではストレスが発毛に影響を与えるメカニズムについてまとめました。
白髪
髪の毛の色素は色素細胞(メラノサイト)の働きによって決まります。
ストレスが白髪に影響を与えるポイントは以下の3点です。
- 活性酸素が増加する
- 交感神経が活性化し色素細胞(メラノサイト)の機能が低下
- ストレスによる睡眠不足により血流が悪化
ストレスが溜まることで活性酸素が必要以上に蓄積され、健康な細胞まで攻撃してしまいます。
そのため髪の毛を正常に作るための毛母細胞まで攻撃してしまい、色素細胞(メラノサイト)の機能が低下してしまうのです。
ストレス状態が続くと交感神経が活性化し、色素細胞(メラノサイト)の機能が低下することは、2020年ハーバード大学の研究チームによって報告されました。
交感神経が活性化することでノルアドレナリンが放出され、このノルアドレナリンが色素細胞(メラノサイト)の機能を低下させ、損傷させてしまいます。
この研究では、急激なストレスによって交感神経が活性化されると、色素幹細胞の集団全体を永久に枯渇させることまでわかったのです。
さらにストレスが溜まると睡眠不足を引き起こしてしまいます。
睡眠不足も白髪の原因のひとつで、睡眠時間が少ないことで交感神経が優位になり、血流を悪化させます。
血流が悪化してしまうと、髪に必要な酸素や栄養が運ばれないため色素細胞(メラノサイト)の機能低下につながるのです。
抜け毛・薄毛
抜け毛・薄毛の原因も白髪のメカニズムと同様に、血流悪化による栄養不足や頭皮環境の悪化が考えられます。
頭皮環境を悪化させることでかゆみや炎症を引き起こし、掻き壊してしまうと毛根にダメージを与え、毛髪サイクルにも影響を及ぼします。
髪のパサつき・枝毛
ストレスで髪がパサついたり枝毛になる原因は、ストレスによって油分のバランスが崩れてしまい、頭皮や髪の毛の乾燥を引き起こすためです。
またストレスが溜まることで血流が悪化し、白髪同様に髪に必要な栄養や酸素がいかなくなる為、健康的な髪の毛を維持できなくなります。
頭皮環境の悪化(乾燥によるかゆみや湿疹)
ストレスが溜まって血流が悪化すると血の巡りが悪くなり、頭皮に必要な酸素や水分が行き届かなくなることで頭皮の乾燥を引き起こしてしまいます。
頭皮が乾燥するとかゆみに繋がり、掻いて炎症を起こすと湿疹が出て、頭皮環境が悪化します。
頭皮の乾燥は油分と水分のバランスを崩すため、ハリやツヤのある健康的な髪の毛も生まれにくくなるのです。
頭皮の臭い
ストレスが溜まると新陳代謝の機能が低下するため、肌のターンオーバーが崩れ毛穴に汚れや余分な皮脂が溜まりやすくなってしまい、頭皮の臭いの原因は毛穴の汚れに繁殖した雑菌です。
頭皮の毛穴にアクネ菌が増えると、赤く膿をもったニキビができてしまいます。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、頭皮を含む皮脂の分泌が多い皮膚にかさぶたやかゆみを伴う炎症を起こす状態です。
ストレスによってホルモンバランスが崩れる事で、男女問わず男性ホルモンが優位になり、皮脂分泌が過剰になります。
皮脂分泌が過剰になると、皮膚の常在菌であるマラセチアというカビ(真菌)が増殖してしまい、皮膚の炎症を引き起こしてしまいます。
Natureで発表された「ストレスが発毛に影響を及ぼす仕組み」にはGAS6が関与
前項でご紹介したストレスが発毛に影響を及ぼすメカニズムについてご紹介しましたが、ここではストレスと発毛の関係をさらに分子レベルで研究したNatureの発表内容をご紹介します。
この論文は2021年4月Natureに掲載され、たちまち話題となりました。
研究テーマは、「幹細胞;コルチコステロンはGAS6を阻害して毛包幹細胞の休止状態を調節する」です。
論文の内容を一部以下に引用します。
毛包は、成長期と休止期を周期的に繰り返す。齧歯類とヒトを対象としたこれまでの研究で、ストレスが発毛に影響を及ぼす可能性が示されてきたが、ストレスと発毛がどのように関連しているのかは、ほとんど解明されていない。今回、Ya-Chieh Hsuたちは、ストレスが発毛に及ぼす影響を明らかにするため、マウスを使って、コルチコステロン(慢性ストレス時に放出されるマウスのホルモン)が毛包の活性をどのように調節するのかを調べた。 マウスを使った複数の実験から、コルチコステロン濃度が上昇すると、毛包は長期間にわたって休止期にとどまり、再生できないことが明らかになった。逆に、コルチコステロンが枯渇すると、毛包幹細胞が活性化され、新たな発毛が起こる。Hsuたちは、コルチコステロンがGAS6タンパク質の産生を抑制して、毛包幹細胞の活性化を阻害することを報告している。GAS6は、コルチコステロンが存在しない場合に、毛包幹細胞の増殖を促進することが示されている。今回の結果は、GAS6の発現を回復させれば、ストレスによる毛包幹細胞の阻害を克服でき、発毛の再開を促進する可能性のあることを示唆している。
引用:幹細胞:ストレスが発毛に影響を及ぼす仕組み | Nature | Nature Portfolio (natureasia.com)
この論文ではストレス時に放出されるホルモン「コルチコステロン」が、毛髪に関してどの程度関わっているのかを研究しています。
この論文の結果は以下のとおりです。
- コルチコステロンが増加すると毛包幹細胞の働きが休止状態になる
- コルチコステロンは真皮乳頭に作用してGas6(growth arrest specific 6)の発現を抑制することで、毛包幹細胞が休止する
- Gas6(growth arrest specific 6)を抑制することでGas6毛包幹細胞の働きが活性化される
この論文ではストレスがなければ、毛包幹細胞は頻繁に毛髪サイクルを機能させることができると実証されました。
ストレスと毛髪の関係を裏付ける内容となったでしょう。
まとめ
この記事ではNatureで公表された論文を中心に、ストレスで禿げる仕組みを徹底解明しました。
ストレスが白髪や抜け毛などの毛髪トラブルに繋がることは以前より議論されていましたが、2021年Natureに公開された論文で、分子レベルでのストレスと毛髪の関係性が明らかになりました。
ストレスが溜まることでストレスホルモンと呼ばれるコルチコステロンが増加し、髪の毛の生成に大切な毛包幹細胞の動きを休止させてしまうのです。
ストレスを溜めないためにも無理のない有酸素運動を行ったり、集中できることをみつけるなど自分に合ったストレス解消法を探してみましょう。